君が思い出になる前に…
「祐ちゃんは、加賀さんの事、好き?」唐突な質問をしてきた。
「お、おれ?変な事言うなよ」
「変じゃないでしょ?ちゃんと答えてよぉ」
「そんな風に思った事なんて、一度もないよ」
「ほんとにぃ?」
いたずらっぽくおれの顔を見た。
「ほんとだよ。ないよ…」
多分…。おそらく…。
「いつも隣りの席にいて、頭のいい子だったから、たまに勉強教えてもらってた…。ただそれだけ」
「教えてもらってた?」
「うん…。おれ、15年前は、出来よくなかったから…」
「祐ちゃんが?信じられな~い」
「いや…。あの…。ほんとなんだけど…。がっかりした?」愛想つかすんじゃない?
「全然」
ケロッとした顔してる。
「電気、もう点けてもいい?」
心配げに絵美が言った。
本当にどこまでも気づかってくれている。
「う、うん」
濡れた頬を両手で拭いながら答えた。
壁にある電気のスイッチを入れた。
眩しい。眩しくてまぶたが半開き状態でパチパチやってしまった。
「ねぇねぇ、15年前のその話し、もっと聞かせて」
なんか楽しそうに言ってる…。おれの泣きべそ顔を無視するように、明るい顔を見せてくれてる。
「え~、聞くのぉ?」
「うん!聞きたい!」
テンションたかっ!「何を聞きたいの?」
「じゃあ、あたしとの出会いから!祐ちゃんが告白してくれたんでしょう?」
冷やかすように言う絵美。
「その話し?えぇ~!」
恥ずかしいなぁ。そんな話ししたくないよぉ。
「最初なんだっけ?手紙くれたんだっけ?」
二、三日前に言った事、しっかり覚えてるよ…。タジタジだなぁ。
「え、えっと、最初、3年になる前の春休み。だいたい2ヶ月前の事なんだけど、部活で、学校の外周ランニングをしてたんだ。途中でばてて、休んだところが第二体育館だったの。その時、中から音楽が聞こえてきたから、何だろうって思って、覗いてみたら、そこで絵美が踊ってた」
「踊りじゃないわよ、演技よ」
「あ、そうか…」
失礼。
「それで?」
「で、おどっ、じゃない、演技してた絵美の…レオ…、レ」「なぁに?」
顔が熱くなってきた。
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