君が思い出になる前に…
「レ、レオタード姿を見て、ドキッとしたって言うか、衝撃って言うか、とにかく一目惚れしちゃったんだ…」
恥ずかしいから小声で言った。
「え?見たの?…、エロ」
聞こえたの?耳いいなぁ。絵美がぷくっとふくれた。
「ごめん…。でも、凄く綺麗だったんだよ。周りの誰よりも輝いてみえたんだ」最大のフォロー。
「本当に?少し嬉しいかも!」
ヨシ!
「それからそれから?」
「それから、家に帰って速攻手紙を書いた。何を書いていいのかわからなくって、何回も書き直して、やっと書き上げたのは朝方だった。それを次の日に渡したの…」
「へぇ~、いいなぁ、あたしももらってみたい!もう一回書いてよ」
「ば、ばか言うなよ!」
「だめ?」
「だめ…」
「ケチんぼ…」
「…」
少し間をおいて、顔を見合わせ笑ってしまった。

考えてみたら、さっきの絵美の話しも、今のおれの話しも、当事者同士なのにまるで他人事みたい。こんなんで本当にいいのだろうか…。
だけど、絵美が来てくれてたお陰で、明るくなれた。
でなければ、暗がりに一人、まだ泣いていたかもしれない。紀子の事を考えて…。
絵美には感謝しなきゃ。本当にいい子だ。ずっと一緒にいたい。
本気でそう思った。

「祐ちゃん、元気出た?」
「うん。絵美のお陰だよ。ありがとう…」
「よかったぁ」
絵美が嬉しそうに言った。


< 117 / 200 >

この作品をシェア

pagetop