君が思い出になる前に…
昨日の紀子の顔がまた浮かんできた。
『ずっと友達でいようね』…か。
忘れてあげなければいけないのかな。昨日の話しは…。
紀子は、この世界の今の生活に満足してるようだし、そっとしておく事が彼女にとって一番なのかもしれない。


1時間目が終わった時だった。
「元宮君!」
廊下から隣りのクラスの子がおれを呼んでいた。
ずいぶんと慌てた表情で手招きをしている。
なんだろう?
近づいて行ってみると、青ざめた顔をして言った。
「絵美知らない?」思いもよらない質問に戸惑った。
「え?どうかしたの?知らないけど」
「家から学校に電話があったんだって…。絵美行ってますかって。先生が来て絵美を見た人いるか、確認したんだけど、今朝は誰も会ってないって。元宮君本当に知らない?」
慌てて話す、絵美のクラスメート。
「いや、おれも今日はまだ会ってないけど」
ただ事ではない様子だ。
「どこ行ったんだろ…。学校サボるような子じゃないのに」うつむいて言った。
「おれ、探してくる!」
衝動的に口にしていた。
「なにか、心当たりあるの?」
「いや、ない。全然ないよ」
次の瞬間駆け出していた。
「おい、元宮!どこ行くんだ?授業始まるぞ!」
岡本先生が駈けてきたおれとすれ違いざまに言った。
少し通り過ぎたところで振り返り、
「先生、杉下がいないって…」
「あぁ、聞いた。今お母さんが警察に相談しているらしい。お前は教室に戻れ」と岡本先生が教室を指差し言った。
「おれ、探してきます!今日は休みにしてください」
そう言って再び駆け出した。
「お、おい!待て!教室に戻れ!元宮!」
岡本先生の呼ぶ声を無視して、学校を飛び出した。

どこに行ったんだ?どこを探したらいいんだ?。とりあえず、絵美の家に行ってみるしかない。

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