君が思い出になる前に…
ようやく二人に解放され、ベッドに入ったのは、深夜1時を過ぎてからだった。
絵美の見てきた未来。
2007年6月10日の朝。
通勤途中に、おれの車とタクシーが衝突して重体。
それはおれのいた未来じゃない。
パラレルワールドの違うおれの話し。
おれの母さんは洋服屋で医者じゃない。姉さんなんて、おれには存在しなかった。
最初からおれは、ひとりっ子だった。

中学の時の成績は中の下だったし。
名前を書き忘れなければ、満点の500点を取れるような秀才でも絶対ない。
絵美とは付き合ってはいたけど、家を行ったり来たりするような、こんなに深い付き合いなんてしていない。交換日記をしていて、たまに一緒に帰った程度。
手を繋いで帰ったのだって2~3度だけだったと思う。
紀子に告白された事など、一度だってなかった。
ただ隣りの席に座ってたというだけの子。

高校は就職重視の北高。
国立を目指すような秀才の入る鳴醒など、受験できるはずがない。
おれの未来に絵美はまったく関わっていなかった。だから、おれの部屋で目覚めるはずもない。
全部が全部、おれの人生じゃない。それは紛れもない事実。


何となくだんだんわかってきた気がする。
おれは重大な、とんでもない勘違いをしている事に…。


 やっと解った気がした。パラレルワールドのからくりが…。
少しずつズレて、重複した世界が存在するパラレルワールド。
そこには、自分もその世界の数だけ存在するって事。
元宮祐作という人間がその世界の数に等しい位、存在するとしたら…。

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