君が思い出になる前に…
パラレルワールドの存在を知った時点で、どの元宮祐作が基本なのかって事だ。原因がどの元宮祐作にあったのか。

おそらく基本なんてないんだ。
つまり、どの世界の元宮祐作も、きっと自分が基本だと考えているはず。
おれもそうだった。おれが中心だと思ってた。
それが大きな間違いだったんだ。
おれがこの世界に来たから、この世界にいた秀才で中学三年の祐作が飛ばされた訳じゃなくて、誰かに飛ばされてきたのは、おれの方だったんだ。
おれが飛ばされる理由なんて最初から何も無かった。
別の世界の元宮祐作がおれを弾き飛ばしてしまったんだ。
原因が考えられるのは、絵美の見てきた未来の祐作なんじゃないだろうか…。
それとも、おれの知らないまったく別の祐作かもしれないけど。
すべての原因が自分にあると思っていたのが間違いだった。おれは、数ある中の元宮祐作の一部なんだ。自分が中心だと、そう信じ込んでいた。
なら、なぜおれがこの世界に飛ばされなければいけなかったのか…。
もしかしたら、どこに飛ばされようが関係無かったのかもしれない。
ビー玉遊びのように、弾かれたビー玉はどこへ転がるか分からない。
そんな現象なのでは?
そこに理由など存在しない。おれがその世界にいては、不都合だったから。
おれのいた世界に、違う世界の祐作が来たから、必然的に飛ばされた。
理由はそれだけ。
ひとつの世界にふたりの祐作の存在は有り得ないはずだから。

紀子にも言える事なんだ。
1年3ヶ月前にプロポーズされた紀子には、関係無かったのかもしれない。
彼女もまた、無数に存在する紀子のひとりなんだ。
たまたま別の世界で不都合があって、飛ばされてしまった、いわば被害者なんだ。
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