君が思い出になる前に…
おれも紀子も、原因を作った別の自分に弾き飛ばされたんだと思う。
同じ世界にふたりの自分が存在できないという事は、元の世界に戻るなんて考えるのは不可能なんだ。
このまま、15歳の世界を生き、別の15年を辿るしかない。同じ道はきっと歩けない。少しずつズレて、違う15年後になってしまうんだ。必然的に…。

はっ!
こ、これが啓示なのか!?
この世界での絵美が、おれたちに啓示を与える役目だったのか?…。


翌日学校へ行くと、校内中の噂になっていた。
絵美の行方不明事件。
警察沙汰になったのがまずかった。
絵美は職員室で事情を聞かれ、かなりへこんでいた。
その隣りに、おれも並んでいた事は言うまでもない。
絵美が先生に説明した、学校へ行きたくなかったって話しは、さすがに誰にも受け入れてもらえなかった。
おれとの交際で、何か問題があったのではないかと思われているみたいだった。単に原因はおれって、解釈されてしまっているみたい…。
それならそれで全然かまわない。そう理解してくれるなら、面倒な説明をする必要もないんでね。
逆に助かった。
『すみませんでした』って頭を下げれば済む事だし…。


職員室を出たおれと絵美。好奇の眼差しに晒され、廊下をうつむきながら、教室に戻った。
「祐ちゃん、ごめんね、あたしのせいで…」
絵美が申し訳なさそうに小さな声でおれに言った。
「気にすんなよ…。おれは全然平気だから。元の世界じゃ、職員室に呼ばれるなんて事、しょっちゅうだったから」
おれは、明るく言い返した。
少しだけ、絵美の表情が和らいだように見えた。
「じゃ、またあとでね…」
そう言って自分のクラスに入って行った。
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