君が思い出になる前に…
やはり教室に入った途端、クラスメートが一斉に絵美を囲んでしまった。
きっと今日一日、辛い日になるんだろうな…。

おれも教室に戻ったら、さっそくだ。
「よぉ、ロミオ!ジュリエット見つかって良かったなぁ~」「ふたりでどっか行ってたのかぁ?」
次々とくだらない事を言う馬鹿共たち。ぶん殴ってやりたい気持ちをグッとこらえた。
絵美はもっとひどい事を言われているかもしれない。そう思ったら、なんとか自分を抑える事ができた。
席に着くと紀子が話しかけてきた。
「あっ!怪我したの?大丈夫?」
「あぁ、平気…」
このクラスで傷を気遣ってくれたのは、紀子だけだ。
「杉下さんは?大丈夫なの?」
「なにが?」
「なにがって…」
言葉をなくした紀子。
「加賀の記憶にもなかっただろ?こんな事…」
紀子は、その言葉に無言でうなずいた。
「それよりあとで話したい事がある。昼休みにでも。いいかな?」
「う、うん」
紀子は再びうなずいた。
ちょっと言い方が冷たかったかもしれない。
紀子は気遣ってくれたのに、逆に周りの人間といっしょにしてしまったかもしれない。
ごめん…、紀子。


昼休み、校庭の隅っこで紀子とおれは、花壇の縁に腰を下ろしていた。
いかにも花壇の手入れをしてますって感じで…。
多分不自然には見えないと思った。
「なぁに、話しって…」
さっそく紀子が聞いてきた。
「昨日の絵、あっ、杉下の事なんだけど、いなくなった事件。あれね、彼女タイムスリップしたみたいなんだ。はっきりは分からないんだけど」
「え!?い、いつに!?」
驚いた表情で紀子が言った。
「未来。おれが飛ばされてきた時代。つまり2007年…。そこでおれは事故に遭い、意識不明の重体だったらしい」
昨日の絵美の話しをそのまま聞かせてあげた。
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