君が思い出になる前に…
「おれもそうだといいなぁ、って思うよ」
「それじゃ、賭けにならないじゃない!」
不満そうな顔をする絵美。
「だって本当だもの」
「本当にそう思う?」
「うん、本当に思うよ」
嬉しそうに、おれの腕にしがみつく絵美がとても愛おしかった。
「ずっと一緒にいようね。思い出になんてしたくないもん…」
「思い出?」
「うん、一緒にいれば、思い出にならないでしょ?ずっと続くんだから…」
過去の出来事っていうのは、みんな思い出って言うんじゃないのか?
そう思ってはみたけど、口には出さなかった。
思い出かぁ…。
15年後のおれにとって、絵美は思い出になってたんだろうか。ちっとも考えた事なかった…。
思い出した事なんて、なかったかもしれない。
酷いよなぁ、おれって…。

でも今は、おれも思い出になんてしたくない、そう願っている…。
「うん、そうだね」過去の記憶が変わって欲しいと、本気で思っていた。
「祐ちゃんの未来に、あたしはそばにいたの?」
意外と答えに困る質問だな。
「いなかった…よ」事実を言った。
「そうなんだ…」
やっぱり少し落ち込んだ様子の絵美。
「未来の祐ちゃんって、なにをしてたの?」
気を持ち直して、また質問してきた。
「おれ?スーパーに勤めてたんだ…」
「スーパー?」
「うん、高校を卒業して、すぐ就職したんだ。バスケットボール部のあった、そのスーパーに勤めて26歳まで現役でやってた」
「やめちゃたの?バスケット…」
「うん、試合中に相手の選手とぶつかって、膝を怪我したんだ。長いこと医者に通ってたけど、全力では走れなくなってしまった。それでも1年近くは、チームに残ってたけどね、若い選手がどんどん力をつけてきてたしね。おれのいる場所は、なくなってたんだ…」

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