君が思い出になる前に…
「今、ぶつかりそうだったから…」
正確に言えば今ごろ、紀子は地面に倒れてんだよ。
「え?なに言ってんの?」
紀子はなにもわかってない。
でも今、過去にあった事故をおれが回避したことは事実だ。それってまずい事なのか?過去を変えてはいけない?別に関係ないよな…。
すき好んでこの時代にきた訳じゃなし、未来が変わったって、知ったこっちゃない。
それより事故が起こるのを知ってて見過ごす方がよくないよな、きっと…。
過去を知ってるおれだけにできる事…。
「紀子!大丈夫?」真理絵が駆け寄って言った。
「なに?どうして?元宮君が突然あたしの事引っ張ったのよ。あたし何したって言うの?」
おれの顔を見ながら紀子が言った。
「違うよ紀子、今あんたあの男子とぶつかりそうになったんだよ!それを元宮君が助けてくれたんじゃない」
「え?…そうなの?」
真理絵の顔を見る紀子。
そうだよ。真理絵はちゃんと今の状況わかっていた。
「あ、ありがとう…」
紀子が半信半疑ながら、おれに礼を言った。
「あ、いや、別に…」
ちょっと照れくさい。
だけど、怪我しなくて良かったよ。
医務室に真理絵に付き添われ、フラフラ歩いていく姿を見なくて済んだよ。
「ねぇ、いっしょにやる?」
真理絵がラケットを差し出した。
「いや、いい…やめとく」
中学生と昼休みにバトミントン?恥ずかしいよ…。
15年経ってもそれは変わらない。でも15年前の自分と今の自分の恥ずかしいという感覚はまるで別のものだ。
それは理解できた。
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