君が思い出になる前に…
「誰?」
「あたしよ、絵美よ」
絵美?うそ!
中学生には見えないけど。
どう見ても、どこかの若奥様って感じなんだが…。
あぁ、確かに絵美だ…。
見覚えのある顔とは少し違って見えるが間違いなく絵美だ。おれ、頭を打ったからか?
「絵美…」
絵美がしっかりおれの手を握っている。感覚が戻ってきたみたいだ。
ずっと前から握っていたのか?もしかして。
「絵美さん、もう大丈夫。脳波に若干の異常が見られるようだけど、特に問題はないと思うわ。時間をかけてゆっくり治しましょう」
「ありがとう、恭子さん。本当にありがとうございます」
絵美がまた泣いている。
泣き虫だなぁ。
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