君が思い出になる前に…
「え?なら、なんで出てきたの?」
真理絵が不思議そうに言った。
「それは…加賀がぶつかりそうだったから…」
「え?ぶつかりそうだった?」
また真理絵が不思議顔をしておれを見つめた。
「う、うん…」
ぶつかるのがおれには分かっていたから。
「そうなの…?」
真理絵は首をかしげている。
いいよ、無理に理解しようとしなくて。非現実的な事がおれの身の上に起きてることなんて、説明する気もないし…。
教室に戻ろう。
「ありがとうね」
背中で紀子が言った。左手を揚げそれに答えてあげた。

教室に戻ると廊下で杉下絵美が待っていた。
「どこ行ってたの?」
やっぱりちょっと、スカート巻きすぎなんじゃない?…。
「あっ、今?…校庭に行ってた」
彼女のスラッと伸びた足から目を逸らしながら言った。
「はい、これ…、明日まで書いてきてね」
絵美はうれし恥ずかしそうにノートを差し出した。
交換日記…。懐かしい…。
そうだ、教えてあげようか?この結末を。悲しいんだよ…。
君の誤解で交換日記をやめる事になるんだ。
紀子と一緒に帰るところを見られちゃったんだよなぁ…。たまたま一緒になっただけなのに、絵美はそれを勘違いして、一方的にやめてしまったんだ…。
あぁ…、徐々に思い出してきた。
だんだん昨日の事のように頭に蘇ってきた。

< 15 / 200 >

この作品をシェア

pagetop