君が思い出になる前に…
「加賀さんもね、去年事故に遭ってこの病院に運ばれてきたの。その時の担当医があなただったのよ。必ず治すって言って、見放した他の先生方に反発して、一生懸命治療に専念してたものね。本当に良かったわ」
姉さんは嬉しそうに言った。
「おれ、医者?」
「そうよ。脳神経外科医…」
「脳神経外科医?おれが…、加賀を治した?」
「そうよ、これからちょっと加賀さんの様子、見てくるわね」
そう言って、再び姉さんは病室を出ていった。
「祐作先生…、なにかあったら呼んでくださいね。ナースステーションに戻りますから。奥様、あとはよろしくお願いします」
祐作先生って、おれの事?
「あ、看護士さん」部屋を出ようとした看護士を呼び止めた。
「先生、私、岡野です。一緒に仕事させて頂いてました。早く思い出してくださいね」
岡野さん?記憶にない。

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