君が思い出になる前に…
「そんな事も思い出したの!?嬉しい!元に…、元に戻ったのね」

絵美が涙ぐんでいる。

「あぁ、そうだよ」
本当は、思い出したんじゃない。

多分違うと思う。

記憶が書き込まれたんだ。

新しい記憶が頭の中に入ってきたんだ。
おれの記憶じゃないおれの記憶が…。

素直に解釈できないおれは、やっぱり異常かもしれない。


「今、お姉さん呼んできます」

そう言って絵美が病室を飛び出して行った。

おれは、完全にこの世界に同化したような気がした。


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