君が思い出になる前に…
「おれもそろそろ仕事に出るよ」

いつまでも病室に寝たきりでいる訳にはいかない。

「そうね、明日もう一度脳波の検査して、その結果を見てから退院っていう事にしましょう」

姉さんもやはり医者の顔をしていた。


15年前、毎朝おれの弁当を作ってくれてた、優しい姉さんの顔と重なって見えた気がした。

「うん、わかった。そうするよ」

ベッドから起き上がり、窓の際に立って背伸びをひとつした。


晴れ渡る空の下、住宅街の向こう側に、青い海と白い灯台が見えた。


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