君が思い出になる前に…
「こんなに景色のいい部屋だったのかぁ…」


「え?窓の外を見るの初めてじゃないでしょ?2年もこの病院にいるのに」

姉さんが不思議そうに言った。


「あぁ、初めてじゃないよ。改めてそう感じただけだよ…。大丈夫。記憶はちゃんと戻ってるから」

そう、この階からの眺めなら、何度も目にしていた。

「ちょっと加賀紀子さんの様子を見に行ってもいいかな?」
おれはもう、充分回復している。


あとは紀子の事だけが気がかりだった。

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