君が思い出になる前に…
「そうね、彼女も順調に回復しているわよ。見に行ってあげて」

姉さんが言った。

「うん。ありがとう」

「何言ってるの。あなたのクランケでしょ?」

「そうだね、ずいぶんほったらかしにしてしまったけどね」

再びベッドの縁に腰を下ろし、姉さんに言った。

「多分初めてなんじゃない?あなたの顔を見るの…。この病院にきた時はすでに意識が無かったものね」

そう、意識のないまま、救急車で運ばれてきたんだ。


あれから1年。

ようやく意識を取り戻した紀子はおれを見てどんな表情をするのだろうか…。


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