君が思い出になる前に…
「そうだよね、おれの顔を見るのは多分中学卒業以来だよ、きっと」

「そうなの?驚くと思うよ、彼女」

「じゃ、着替えてから行ってみるよ」

「そうなさい。あたしは、仕事に戻るわね。明日、検査の予約入れておくからね」

そう言って姉さんは部屋を出て言った。

「じゃ、あたしも小児病棟の様子を見てくるわ」

絵美が言った。

紀子に気をつかっているのだろうか?


中学のあの日の事を、今も気にかけているなんて事は、ないと思うのだが…。

「うん、わかった」
その返事を聞いて、絵美も部屋を出ていった。


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