君が思い出になる前に…
「タイムスリップ前の記憶?」

おれは驚いて聞き直した。

「えぇ、そうよ。あなたは商社マンじゃない。あなたはここで、お医者さんをしてる。そして、1年も昏睡状態にあったあたしを助けてくれた…」

「商社マン?おれが?」

紀子の言葉にまた驚いた。

おれはもうタイムスリップ以前の記憶は、無くしてしまっていた。

紀子には残っているのか…。

「君はタイムスリップ前の記憶を覚えているの?」

身を乗り出して、紀子に聞いた。

「全部は思い出せないけど、かすかに残っているわ…」

うつむいて答える紀子。


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