君が思い出になる前に…
悪いけど、このくらいは当たり前なんだけど。
ずっと練習してたんですから。
高校に入ってからもレギュラー目指して、毎日居残って何万本もひとりでシュート練習したよ。
社会人になってからは身長じゃ勝ち目がないから、外から打つ事だけを本気になって練習した。
その感覚がそっくりそのまま、ちゃんと残っている…。
こりゃ面白いかも!
「おい、元宮!」
顧問の結城先生だ。赤いネクタイがお気に入り。無精ひげは当時のまんま。
なんか笑っちゃうなぁ。今見ると凄いこっけいだよ。
おれの事呼んでる。「はい」
結城先生のところに行った。
「いつの間にそんなプレーできるようになったんだ?」
「あっ、いや…ちょっと」
…実は隠れて練習してました。
これからずっと11年も先まで…。
って言ってやりたいなぁ。
この矛盾した出来事がおかしくて、楽しく思えてきた。
「おい!園田!元宮と変われ!」
おぉ、結城先生、やっと認めてくれましたか?レギュラーの園田と交代って事はおれがレギュラー組入り?
15年前そうなりたかったよ。
「すげーよお前…」息を切らしながら園田がおれの肩を叩いた。
それじゃ超中学生のプレーをお見せしようじゃないですか。
みんな全然ついてこれない。肩で息してる。
おれはまだ息切れしていない。まだまだいけるよ。
結城先生もびっくり顔、智也も相当焦った顔してる。周りの人間の顔を見てた方が面白いかも。

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