君が思い出になる前に…
会社に電話してみるか…。
家の電話!
これ、旧式のプッシュホンだ。
『おかけになった番号は現在使われておりません。番号をお確かめのうえ…』
繋がらない。何度やっても同じだ。
平成4年って事は、中学3年生?
会社が今の場所にできたのが平成10年だから、まだできていない事になってしまう。

元宮祐作。1977年5月10日生まれ。30歳。高校を卒業後、準大手スーパー『ダイマル』に就職。そこの実業団バスケット部に8年間所属。膝を故障して、26歳で引退。その後、地元の店舗に異動願いを出し、今の店にきて3年経った。青果担当のバイヤーをしている。
それが昨日までのおれ。
今日は昨日のおれじゃない?今は中学生?なんで!?

本当に15歳なら学校に行くしかないって事か?
この顔で会社に行くわけにもいかないし…。
おれには、その選択肢しか残ってないって事なのか?
ならば、学校へ行って確かめればいい!
馬鹿馬鹿しい事なんだが、学生服を着てみた。
ぴったりだぁ。信じられない…。
身長まで縮んでいる。いよいよ本当なのか?
だからさっき、鴨居が高く見えたんだ。
中学三年の時は、確か168cm位だった。高校に入ってから三年間で10cm伸びて、その後は変わらず178cmのまま。
カバンは?持っていく?今更?なんの為に?

「8時5分前!やべっ!」
なんで遅刻の心配してんだ?

懐かしい学校への道を走った。体が軽い。なんでだ?走っても息切れしない。膝も痛くない。
角のマンションがない!10階建てのマンションがどこにも無い。
昔の原っぱのまま。
公園もない。一面水田だ!

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