君が思い出になる前に…
校門を出てから、絵美はうれしそうな顔をして話しかけてきた。
「ねぇ、テストどうだった?」
さっき、教室の外に立ってた時とはまるで違う顔してる。心配した顔など、どっかに置いてきましたってか?
「できてたと思う…、多分」
大人になると、中学の時の勉強なんて覚えていないよなぁ普通。
けど、次々に答えが解ってしまったんだ。夕べ教科書をペラペラめくった程度なのに…
なんか不思議な力が加わってるのかなぁ…。
それが何の為かは解らないけど。
「本当?凄いねぇ!あたしはあんまり自信ないかも…」
うそ言うなよ。
絵美はいつも20番以内だったじゃないか。
おれなんかいつも150番辺りを行ったり来たり…。
そうだ!中間と実力テストは順位が張り出されるんだった!まずいなぁ、いつも下位だったおれが、もし上位の方に名前があったら…。
きっとカンニングしたんじゃないかと疑われるんじゃ…。
「加賀さんはいつも上の方にいるよね?」
「そうだっけ?あまり気にして見た事ないや…」
確かに頭良かったなぁ、加賀は…。
「ふ~ん。そうなの?…遊園地、行くんでしょ?」
話しの転換が早い。自分で加賀の話し振っておいて…。
やっぱりさっきの事まだ気になってんのか?
「う、うん。行くよ。もちろん」
「いつ行く?今度の日曜日は?」
「今度の日曜日?雨降るんじゃない?」15年前のその日は朝からずっと雨だった。なんせ梅雨なんですから…。
「きっと降らないよ!だってあたし、晴れ女なんだもん」
得意げに絵美が言った。
それでも雨なの!
だから映画なの!

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