君が思い出になる前に…
彼女を送り届けると、駆け足で家に戻った。
「ただいまぁ」
「おかえりぃ~」
間髪入れずに返事が返ってきた。
響子姉さんです。今日はどんな格好してんのかな?
あっ、セーラー服。よく見ると、あの水色に紺の縁取りの襟、あれって聖陵女子学園の夏服だ。
この辺りじゃ優秀なお嬢様が通う学校ですよ。
昨日は動転していたから全然気づかなかった…。
しかし、テーブルに足を乗っけてソファーにふんぞり返っている姿は、決してお嬢様のする格好ではないのでは?
「なに?」
見ていたら、おれが逆に見られた。
「あっ、いや、別に…」
こんな事してられない。
名簿名簿…。
急いで部屋の机の引き出しをさがした。
「あった!」
それを持って電話のもとへ。
さっき紀子の言い掛けた事が凄く気になった。
『はい、加賀です』出た!
「あの、元宮ですけど、紀子さんいらっしゃいますか?」
『あたしです』
「あっ、加賀?これから会えない?さっきの続き、聞きたいから」
『うん、あたしもそう思ってた』
「そう、じゃどこに行けばいい?」
『あなたの家に行ってもいい?』
「あ、うん、いいよ。じゃあ待ってるよ」
そう言って電話を切った。

しばらくして、玄関のチャイムが鳴った。
「は~い」
姉さんが先に玄関に向かった。
「あ、いい!おれが出る!」
姉さんを押しのけ走っていった。
「な、なによ!」
姉さんは怪訝そうな顔をしている。
玄関のドアを開けると紀子が立っていた。
ノースリーブの白いワンピース姿が眩しく見えた。
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