君が思い出になる前に…
学校とは違う雰囲気。
「こんにちは」
彼女は、ちょこんと頭を下げた。
「どうぞ、入って」中へ招きいれた。
「お邪魔します」
姉さんに頭を下げ、居間を通り過ぎおれの部屋へ。
姉さんはそれを見てほぉ~っという顔をしている。
「どうぞ、入って…」
「お邪魔します」
そう言って部屋に入ると、部屋中をじろじろ見回しクスっと紀子が笑った。
やべ!ポスターだらけのままだ。
「あ、あんまり見るなよ。恥ずかしい、15年前の部屋なんだからさぁ」
頬が熱くなった。
「こんなもんでしょ。流行ってたもんねぇ」
まだ笑ってる。
小さいテーブルを部屋の真ん中に出した。
「ここ座って」
「あ、うん」
そこへ、トントンとドアを叩く音。
「はい!」
返事をするとドアを開け、姉さんがジュースを持ってきてくれた。
「いらっしゃい、姉です。よろしくね」そう言いながら、テーブルにジュースを置いてくれた。
「ありがとう」と、おれ。
「お邪魔してます、加賀といいます」
座り直して紀子が言った。
「ゆっくりしてってね」

にっこり微笑んだ姉さんは、部屋を出てドアを閉める瞬間、おれにウインクしていった。
勘違いしてるし…。あとで弁解などする気はありません。
「お姉さんいたのね、凄く綺麗…。うらやましい」
紀子が微笑んでいる。
「それなんだよ!おれに姉さんなんていなかったんだよ。本当は存在しない人なんだよ」
おれは勢いよく話しはじめた。
「そうなの?」
彼女は真っ直ぐおれを見て言った。
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