君が思い出になる前に…
「うん、昨日の夕方、家に帰ってきたら居たんだよ。最初びっくりしたよ。どこの人が入り込んだのかと思って。けど、お袋が帰ってきたら、普通に話してるし。なんも変わりなく普通に家族してんだよ。この人誰って、聞こうとしたらばかにされたし…」
ジュースを一気に飲み、気持ちを落ち着かせた。
「あたしにも不思議な事があったのよ」紀子が言った。
「どんな?」
身を乗り出し尋ねた。
「お父さんが生きてたの。うちのお父さんね、あたしが小学3年のときに病気で死んだの。けど、この世界では生きてたのよ…。思わず泣いちゃった。なんで泣いてるのか分からずに、お父さんおどおどしてたけどね。嬉しくって嬉しくって思わず抱きついたの。なんの疑いも無しによ」
照れくさそうに紀子が話した。
「そうなの!?、凄いなぁ。信じられない世界になってるんだなぁ…。でも、でも加賀の場合、それは実在した人だよね。前の世界では小3までは、生きてたんだから」
「そういう事になるね」
「おれの場合は、存在すらなかったんだよ」
「そっか…ちょっと違うよね」
首をかしげながら紀子が言った。
「お父さんに会う前になにか、歴史を変えるような事した記憶ある?」
「どういう事?」
「おれの場合、校庭で君を助けた。それから、数学でもバスケでも、前とは違う事をした。それが歴史を変えるような事だったかどうか分からないけど。だからじゃないのかなと思ってる…」
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