君が思い出になる前に…
「あっ!あたし、こっちに来た朝、なにがなんだかわかんなくって、勤めていた会社に行ったり、住んでたアパートに行ったりした。けど、会社もアパートもなかったの。怖くなってどうしていいのか分かんなくなっちゃって…、駅のベンチで放心状態でいたら、補導されたの。お母さんが迎えにきてくれたけど…」
「そっかぁ…」
「当然、15年前にそんな補導されるような事はしなかったわよ。お母さんに連れられ、家に帰ってきたらお父さんがいたの…。びっくりしたけど、懐かしくって涙が止まらなかった…」
「そぉ…」
考え込んでしまった。
なにか共通点があるのだろうかと…。
「やっぱり歴史が変わったの?」
紀子が不安げに言った。
「わからない。元いた世界に原因があったのかなぁ…?」
「原因って?」
顔を覗き込む紀子。
「毎日スーパーに通い、朝から晩まで仕入れの管理。家に帰ってくればする事もなく、ただ寝るだけ…。なんの変化もない毎日」
「スーパー?」
「うん…」
「うそ!」
紀子が突然、驚いたような顔をして言った。
「な、なに?どうかした?」
「あ、ん~ん、なんでもない…」
何でもない訳ないだろう?顔色が変わったよ。

様子がおかしい。
「なんなの?」
紀子に聞いてみた。
しばらく黙っていた紀子。
しかし、おもむろに口を開いた。
「あたしの知ってる元宮君じゃない…」
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