君が思い出になる前に…

「どういう事？」
紀子の言ってる意味がわからない。
「元宮君はあたしと同じ会社にいたのよ…。高校も大学も一緒だった。それに…」
そこまで言って紀子の言葉が詰まった。おれが紀子と同じ大学出て、同じ会社にいた？なんだそれ…本当に？
「それに？なに？」
「なんでもない…。これ以上は、今は言えない…」
もったいぶってる？気になるじゃないかよ。
「なんで？言ってくれよ」
紀子はまた黙ってしまった。

「ごめんなさい、今は本当に言えないの。もう少したったら必ず話すから…」
下をむいてそう言った。
「わかったよ。気になるけど…」
なんだよ。いったい。思わせぶりだなぁ…。

「それよりもっと大事な話しがあるの…」
話題を変えた。
それよりももっとって、さっき学校で話しかけた事か？
「昨日の事なんだけど…」
「昨日の事？」
「昨日、校庭で元宮君に助けてもらったでしょ？」
「うん」
「あれね、あたしの過去に怪我したり、元宮君に助けてもらったりした記憶はないの…」
「え？どういう事？」
紀子の顔を見直した。
「だから、あたしの15年前、つまり1992年に校庭で事故にあったなんて記憶はないのよ…」
「そ、そうなの？」
「もしあったとしたら、バトミントンなんてやってないと思うんだけど…自分で事故に遭う事知ってたら、絶対やらないと思う…」
なるほど。そういう事になるよな…。
「だよなぁ。でも、おれの記憶にはそれがあった。15年前に、加賀は倒れて脳しんとうを起こし、保健室に連れて行かれたんだ。知ってたから昨日は助けられたんだよ…。間違いなくあの時、事故は起きてたんだ」
昨日の場面を思い出していた。