君が思い出になる前に…
学校に着いてしまった。まるで卒業アルバムの写真を見ているみたいだ。
昔のまま、木造二階建て校舎。
この校舎は平成6年に取り壊され、新しく建て替えられたはず…。なのになんで?
「裕作!」
ボォッと佇んで眺めていると後ろから肩を叩かれた。
こ、こいつクラスメートの萩原健太だ!
「お、お前…!」
中学生の健太が立っている。
こいつ市役所に勤めたはず。結婚式にもよばれた。2年前のことだ。結婚式には奥さんは妊娠5ヶ月だった。それ以来あってないから子供は今、1才?
だけど、目の前の健太はどうみても中学生…。
「どうした?青い顔して…。具合でも悪いんか?」
「う、うん…。ちょっと…」
なにも話せない。何を話していいのかさえ解らない。
「大丈夫かよ?しっかりしろよ」
健太が肩を叩いた。
「な、なぁ健太、今って、何年?」
恐る恐る聞いてみた。
「おいおい、なに寝ぼけてんだよ」
まるで相手にしていない。
「じゃあさ、今の首相って誰よ?」
「なに、朝から社会の問題かよ、それくらいおれでも解るっつーの!」
「だ、誰?」
「宮澤喜一だべ!ばかにすんなよ」
宮澤喜一…だって…。うそだろ?安倍晋三だろう?…。
「ほら、授業はじまるぞ!」
そう言って先に校舎に入っていく健太。
「ちょ、ちょっと待てよ!」
後を追うしかない。
「け、健太!あの、おれのげた箱…どこだっけ…」
どこだか忘れてしまってるよ。
「おいおい、ホントどうしたんだよ一体。それともふざけてんの?ここだろが!」
健太が怒っている。けど、自分にだって理解できない状況なんだよ。
「あ、あ、そ、そうだ、ごめん…」
本当に気分が悪くなってきた。
これからどうなるんだ?
なんでこんな事に?
さっぱり理解できない。
健太の後を追い教室に向かった。


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