君が思い出になる前に…
波紋
 おれの過去と紀子の過去の記憶が違う?
15年後の世界、と言うより元いた世界まで違うって?
ここにいる紀子は、おれが3日前までいた世界とは、違う世界にいたって?
高校も大学も会社までも一緒って…。
未来までも違うのがパラレルワールドって事なのか…。
なら、おれが経験した、これから起こる15年間の経験なんて、役に立たないって事になってしまう…。

想像できないから、未来って事なのか?じゃ、今までの経験ってなんなんだ?
これから先どうなって行くのか、まったく見当がつかなくなってしまった。

なんの答えも見つからないまま、時間が過ぎていった。
おそらく何十時間、何百時間かけても、答えは出ないだろうな…。

「これからどうしようか…」
と、紀子がつぶやいた。
「おれたちは何かをしなければいけないのかなぁ?それが何かまったく分からないけど、その何かを成し遂げたとき、元の世界に戻れるとか?」
あくまで推論でしかない…。
多分、紀子も何かをすれば、元に戻るって事は、わかっているんだと思う。
もう一年もこの少しズレた世界に来ているんだから…。


「帰らなきゃ…」
机の上にある時計を見て紀子が言った。もう7時を過ぎている。
「ごめんね…。なんの役にもたたなかったね…」
この世界の先客は、おれなんかよりずっと不安だったんだろうな…。訳もわからず、ずっとひとりで悩んでいたんだと思う。
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