君が思い出になる前に…
午前中に昨日のテストが返された。
有り得ない事が的中した。
これまで4教科、すべて100点…。
間違いなく自分の字。ちゃんと自分で書いた記憶もある。
15年前の自分には有り得ない事だ。
あとは午後の英語だけ…。
「元宮!ちょっと職員室まできなさい」担任の岡本先生が手招きをしている。
数人の同級生が一斉におれを見た。
「なにかしたの?」真理絵が紀子の前の席に座り、弁当を広げた。紀子もおれを見ている。
「さぁ…」
首をかしげた。
とりあえず職員室へ行ってみた。
岡本先生の机は職員室に入ってすぐのところにあった。
「お~元宮」
おれに気がつくと、チョイチョイと手招きをした。
「はい…」
「今回も見事な成績だったなぁ」
足と腕を同時に組んでおれの方を向いた。
「そうですか…」
今回も…ですか。
「ところが!なんだがな…、お前、英語の答案に名前書かなかったな」
と、岡本先生が言った。
「へ?そうなんですか?」
唐突に言われて拍子抜けした。
「残念だけど、0点にさせてもらった」「は、はぁ…そうですか…」
「満点なのに、つまらんミスしたなぁ…」
「あ、はい…」
「昨日、ほかの先生方と話しあったんだが、発表は残念だけど、英語は0点にした。けど、成績としてはそのまま残すことにした。ありがたく思えよぉ」
と、岡本先生は眉毛をピクっとさせながら言った。
「は、はい。わかりました…」
お辞儀をして、職員室をあとにした。
とんだドジを踏んだらしい。
まぁ、どうでもいい事だけど…。
15年前の自分なら大騒ぎしただろうけど、なぜかそれほど気にならなかった。
自分の世界ではないという意識が働いているからだろうか…。
現実みを帯びた話しではないように思えた。

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