君が思い出になる前に…
おれはここで悩んでいる訳にはいかない。
この世界の『元宮祐作』を演じるしかないんだ。15歳として、生きるしかないんだ…。
紀子もそうしてるんだし…。


「ただいま~」
玄関を開け、少し疲れた声をあげた。
「お帰り~」
姉さんだ。しっかし元気いいなぁ。
「祐!ちょっとおいで~」
居間でテレビを見ていた姉さんが、部屋へ行こうとするおれを呼び止めた。
「なに?」
今日はTシャツにミニスカートですか…。なかなか素敵ですなぁ。
「何ニヤついてんの?」
え?まずい!そんな顔してました?
「あ、いや…」
言葉が出てこない。「さっき、外であんたを見かけたんだけどさぁ、昨日の彼女と違う女の子連れてたよねぇ~」
どこで見られたんだよ。
「あ~!あれ、絵美だよ。杉下絵美」
確か知ってるんだよねぇ?
「絵美ちゃんは知ってるよ。絵美ちゃんのお姉さんと同級生だからね、てゆうか、昨日の…なんだっけ?…。そうそう加賀さん!あんた二股かけてんの?」
テーブルから身を乗り出して言った。
「そ、そんな関係じゃないよ!絵美は…、絵美はちゃんとお付き合いしてるけど、加賀はただのクラスメートだよ…」
なんで、そんな心配されなきゃいけないんだ?
「本当に~?」
疑っている。
「ほ、本当だよ」
困ったもんだ…。
「どうでもいいけどさぁ、今年は入試なんだからね。恋もいいけど、勉強おろそかにするんじゃないよ」
どうでもいいけど、って…。
なら構うなよ。
「う、うん」
とりあえず、の返事をしておいた。
「絵美ね、明日遊びにくるって…」
一応報告だけしておきます。
「そう、なんで?」なんでって聞かれてもなぁ…。
「あ、いや、ただ遊びに来たいって…」
「ふ~ん、悪い事するんじゃないよ」
「し、しませんって!」
なんだよ、悪い事って。
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