君が思い出になる前に…
まぁ、大人ですから、ある程度の経験はそりゃありますけどね…。
おっと、中学生でした。失礼…。

姉さんに出会ってから、まだ3日しか経ってない。
だけど、どういう訳か本当の姉さんのように思えてきた。そうなんだろうけど…。
でも、本当ならおれの方がずっと年上なのに…。
それになぜかずっと前から知ってたような気もしてきたし。
なんでだ?凄く懐かしい感じがする。不思議な感覚…。


「祐~!電話~!」居間から姉さんの声。誰だろう…
居間に行くと受話器を持ったまま姉さんが立っている。
「同級生のぉ~、加賀さ~ん」
わざとらしく、デカい声。向こうに聞こえるって…。
「はい、もしもし」
『あ、加賀です』
「うん、どうしたの?」
『あのさぁ、これから会えないかなぁ?』
なんだろ?
「今から?う、うん。いいけど…」
『じゃあさ、堤防で待ってる。いい?』海か…。
「いいよ、じゃすぐ行くよ」
『待ってるね』
そう言って電話を切った。
「あんたやっぱり…」
疑いの眼差し。
やっぱり何?誤解してるよ。まったくもう…。
「ちょっと行ってきます」
言い訳をする気にもなれず、家を出た。
玄関の脇に自転車。これはおれの自転車だ。懐かしいなぁ…。
けど、本来ならここにおれの車があるはずなんだけど…。
昨年買った中古のカローラ。庶民の車。
しょうがない。これで行くか…。
久しぶりに自転車に乗った。自転車に乗る機会なんて、全然なかった。どこに行くにも車だったもんなぁ…。

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