君が思い出になる前に…
『起立、礼、着席』クラス委員の栗山誠だ。あいつ、坊主頭のまんまだ。
奴は親父の会社を継いで安泰な未来を迎えるんだ。けど、この15歳の時からそれはわかっていたこと。ただ15年後もそれは変わりなく続いているんだ。

誰に話そう。この状況…。誰も信じてくれないだろうな。理解してくれと言っても理解できる訳がない。
明日、目が覚めたら元の30歳の自分に戻っているのだろうか…。
それともこのまま再び15年を繰り返すのだろうか…。もしそうなったら?
前の15年とは違う選択をすれば未来も変わるのだろうか?
それとも必然的に同じ道を歩くだけなのだろうか?

婆さん先生は婆さんのままだな。それ以上の変化は、さほど望めない。

今日は6月10日…。そうだ、『時の記念日』だ。
それとなにか関係あるんだろうか…。
そんな訳ないか…。
でも、なんでここにいるんだろう?混乱から脱出できない。
『誰か助けて!』と、叫びたくなってきた。
黒板に書かれた連立方程式…。
高校受験のとき、嫌いで出来なかった数学を克服する為に、ばかみたいに勉強したっけなぁ…。15年たっても覚えている。
あの頃、婆さん先生に指され、前に出て答えを書かされた。たしか、ぼぉっと窓の外を眺めていたからだ。
あの頃って…今じゃん…。
なんで今さら数学を勉強しなきゃならないの?
なんでここにいなきゃならないの?
こんなに天気がいいのに、なにやってんだろ…おれ。

< 6 / 200 >

この作品をシェア

pagetop