君が思い出になる前に…
絵美とはなぜか意外とすんなり接する事ができた。
多分経験の積み重ねで、恋も上達してたんだろうな。
それとも『運命』がふたりを引き合わせたから?なんちゃってね…。
絵美と、恥ずかしがりながら、手を繋いで帰った記憶も確かにある。
その時は心臓が破裂するくらいドキドキしてたんだろう。
こんなにフランクに付き合っていた記憶は…、全然ない。


ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴った。
「あら!絵美ちゃん!いらっしゃぁい」
姉さん素早い…。
おれが部屋を出るよりも早く、玄関のドアを開けていた…。「お姉さん、こんにちは~」
お姉さん…。絵美はそう呼ぶんですね?玄関に立っている絵美は、薄ピンクの袖無しシャツにデニムのミニスカート。
昨日の紀子とは、少し感じが違う、夏少女パート2…。
「あ、上がって」
少しだけドキドキしてきたかも…。
大人げない。
「お邪魔しま~す!」
姉さんの事も知っているせいか、気兼ねなく入ってきた。
「どうしたの?」
見とれていたおれの目の前に立ち、絵美が言った。
ふわぁっと、いい香りがする…。
なんだろう?
顔がふにゃって、なってしまいそう。
「な、なんかいい香り…、する」
中3少女にどぎまぎしてどうすんだよ!「家に帰ってシャワー浴びてきたの。汗臭かったら嫌われちゃうもん」
恥じらい加減に絵美が言った。
嫌われる?誰が?
絵美は男子の憧れだった…。
クラス委員の栗山、バスケット部の智也、陸上部の竹内、それにサッカー部の平井なんてのもいたっけ…。
おれの知ってる限りでも、この4人は完全玉砕組。
それ以外にも5、6人は、いたらしい。
春休み中の部活動の時、絵美が新体操をしている姿を見て、惚れてしまったんだ。
次の日、早速ラブレターを書いて、震える手を抑えながら、絵美に渡したんだ。
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