君が思い出になる前に…
健太や智也に馬鹿にされたっけ。
どうせ相手になんかされないって…。
ところが、おおかたの予想を覆し、まさかの即OK。
生まれて初めての快挙だった。
あの時は、本当に天にも登る思いだった。
周りも信じられないって、大騒ぎしていたっけ。

「どうぞ、入って」部屋に招き入れた。ヤバい!
また忘れていた…。ポスター剥がすの…。最悪だぁ!
「わぁ、中山美穂だぁ!祐ちゃん、好きなんだぁ?」
意外な反応…。
一昨日の紀子とは、だいぶ違うなぁ…。「剥がすの忘れてた…」
おもわず頭をかきながら言った。
「何で剥がすの?可愛いじゃない。あたしも好きよ。ミポリン。ワックワックさせてよ~♪なんてね」
ニッコリ微笑んで絵美が歌ってみせた。ミポリンより可愛いかも…。
でも、本当に?
おれに合わせてるだけなんじゃないの?疑り深いイヤなおれ…。
「祐~!ちょっと開けてぇ」
ドアの向こうから、姉さんの声。
すかさず動いたのは絵美だった。
絵美がドアを開けると、姉さんはお盆を持って立っていた。「はい、絵美ちゃん。あたしが作ったのよ。よかったら召し上がれ」
そう言ってお盆を絵美に手渡した。
「お姉さん、ありがとう~。いただきます」
「ゆっくりしてってね。なんなら泊まってく?」
な、何を言い出す!この姉は!
「いいんですかぁ?じゃあ、泊まっちゃおっかなぁ~」
おれの顔をチラッと見て絵美まで!
冗談だろ?冗談だよな?
次の瞬間、ふたりは顔を見合わせ笑ってる。
焦らせるなよ!まったくもう!
「いいお姉さんね。綺麗だし、優しいし、その上頭もいいし。言う事なしよね」そんな事おれに聞くの?
なんも返事できないよ。おれは…。
姉さん手作りのシフォンケーキに紅茶。へぇ~、こんな事もできるんだ…。
やっぱり凄いかも。
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