君が思い出になる前に…
「あ、CD…。いっぱいあるねぇ。祐ちゃんて、どんなの聴いてるの?」
本棚に並べてあるそれを見つけて、絵美が立ち上がった。
短いスカートからスラッと伸びた足。
目のやり場に困ってしまう。
「えぇっと、スピッツとか、松任谷由実とか…。ブルーハーツ、あとは…」
そこまで言ったら、絵美が、
「今井美樹、チャゲアス…。あっ!J-walk!これ聴こぉ」
そんなのもあったなぁ。懐かしい。
「うん、いいよ」
机の上のミニコンポにCDをセットした。

綺麗な指してたんだね
知らなかったよ
隣りにいつもいたなんて
信じられないのさ
こんなに素敵なレディがおれ
待っててくれたのにどんな悩みでも
打ち明けて
そう言ってくれたのに
時がいつか
二人をまた
はじめて会った
あの日のように
導くのなら
二人して生きる事の意味を諦めずに
語りあう事
努める事を
誓うつもりさ
私にはスタートだったの
あなたにはゴールでも
涙浮かべた
君の瞳に
何も言えなくて
まだ愛してたから…
もう二度と会わない方が
いいと言われた日
やっと解った
事があるんだ
気づくのが
遅いけど
世界中の悩み
ひとりで
背負ってたあの頃
俺の背中と
話す君は
俺よりつらかったのさ
時がいつか
二人をまた
はじめて会った
あの日のように
導くのなら
水のように
空気のように
意味を忘れずに
当たり前の
愛などないと
心に刻もう
短い夏の
終わりを告げる
波の音しか
聞こえない
もうこれ以上
苦しめないよ
背中にそっと
さよなら…


『なにも言えなくて…夏』…。
懐かしい。
「あたし、この歌好きよ…」
聴き終えたあと、絵美がしみじみ言った。
「悲しい歌よね…。この歌みたいに祐ちゃんも、なんでもあたしに話してくれたらいいのになぁって思う…」
うつむきながら絵美がしみじみ言った。
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