君が思い出になる前に…
「こんにちは!グループで?いいなぁ」みんなの顔を見回しながら、絵美が言った。
「何言ってるの?元宮君独り占めじゃない、うらやましいわねぇ」
と、真理絵が冷やかした。
「えへっ、ごめんねぇ」
と、照れながら言う絵美。
紀子は、というと、よそよそしい感じがする。こっちを見ないし。
おれと絵美の事が気に入らないのかな…。
「ねぇねぇ、早く行こう」
おれたちの事を無視するかのように、紀子がみんなを促した。
「う、うん…。わかった。じゃあね」
そう言って、真理絵と紀子は人混みの中へ歩いていった。
「ちょ、ちょっと待ってよ~!じゃあな!またあとで」
健太が二人の後を追って走っていった。
「どうしたのかな?加賀さん…。ご機嫌斜めみたい…」
絵美も気づいてたのか。
「さぁ…、なんだろうね」
察しはついたが、素知らぬ振りをした。
「ねぇ、食べる?少し早いけど」
持ってきたバスケットを開いて絵美が言った。
中を見るとサンドイッチや、唐揚げ、卵焼き、ウインナーなど、いっぱい入っている。
早くなんかないさ。朝ご飯抜きできたんだから。
「すげぇ~!美味しそう!」
「どうぞ、召し上がれ」
そう言って絵美がナプキンを手渡してくれた。
「いただきま~す」さっそくサンドイッチに手を伸ばした。きっと早起きして、一生懸命作ったんだろうな…。
健気な絵美を想像していた。
こんなにしてくれて、本当に嬉しいよ。「うまい!おいしい!」
愛情入りサンドイッチは最高に美味かった。
「ホントぉ~、良かったぁ」
嬉しそうに絵美が言った。

「ね、あたし晴れ女でしょ?」
絵美が得意げな顔をしている。
「う、うん…。でもおれの過去が変わっちゃった…」
口いっぱい含んだものを一度飲み込み言った。
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