君がいなくなって
「今、ここにあるものが真由を苦しめるのなら、捨てるんじゃなくて、しまっておけばいいじゃない」

後ろからギュッ、と抱きしめられて。

前にきたそーちゃんの手を私は握りしめた。


温かい…



また大粒の涙がこぼれた。



「拓海も、真由のことは大好きだった。
真由も拓海のことが大好きで、きっと今でも好きなんだと思う。
あいつが生きていれば間違いなく、今、真由を抱きしめているのは拓海だ」

そーちゃんは淡々と続けた。

「真由の中で、もし拓海との事がすぐに忘れ去られてしまうものなら、俺は逆に見損なうよ。
拓海は本気だったから…」



「…じゃないの?」

こういう事を聞くのが怖くて。

私は声に迷いが出ている。

「何?」

そーちゃんは私の肩に顎を乗せた。

「嫌じゃないの?
こんな風に拓海くんを思い出して泣いてるし。
いつまでも引きずってるし」

私はようやく顔を上げてそーちゃんを見た。

「好きになるって簡単なようで難しいんだよ。
そこまで拓海を好きになれたんだから、幸せじゃないか。
その感情や想いは忘れないで欲しい」
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