君がいなくなって
「じゃあ、ここにしようっか」



海に近い温泉旅館で、個室風呂のある所だった。

「そーちゃん、ここ高いよ?」

やはり。

お金が気になる。


「いいんじゃない?
新婚旅行よりはうんとマシだよ」

そーちゃんは私の太股を枕替わりに横になった。

そしてお腹に手を添えて子供の動きを確認する。

最近、これが毎日の日課で。

私も何となく心が穏やかになる。

「もう、8ヶ月なんだよね」

嬉しそうにそーちゃんは言った。

「うん、あと少しだね」



性別は。

もうわかっているけど、聞いていない。

当日のお楽しみという事で。

「あと、2ヶ月か…。
全日本と重ならないで欲しいな」

そーちゃんは少しため息まじりに言った。

予定日より10日後に全日本があって。

ちょっと、どうだろうって思う。


今のところ、立ち合い希望で、父親学級にも参加しているそーちゃん。

おむつの替え方とか本当に上手いらしい。

…そりゃ拓海くんや祥太郎くんの世話をずっとしてきたから上手いんだけど。

私より、絶対に子育て出来ると思う!
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