君がいなくなって
こんな時。

心から頼れる人がそばにいてくれたら。

本当に心強いのに。

と、思う私はまだまだ子供。

それでもとうとう母親になる時が近付く。



痛みがどんどんやって来て。

泣きそうになる。

でも、ここで負けられない。

苦しいけど、頑張らなくっちゃ。







分娩室に向かったのは夜8時。

そーちゃんがちょうど病院に着いた。



後から聞いたら、かなりバイクを飛ばしたらしい。

何もなかったから良かったけど。



「真由、大丈夫か?」

久々に見るそーちゃんの顔が涙でぼやける。

そしてそーちゃんは私の手を握って耳元で囁いた。



「俺、優勝したよ」



優勝って!!

初優勝!!



おめでとう、って絶叫したいのに!!

痛みが強すぎて無理だった。


< 145 / 153 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop