【短編】黒板に、その2文字を
あ。
誰もいない教室。
今、この教室は私1人。
私は閉じていた目を開けて、黒板の方へ歩く。
先生がいつも立つ教壇。
先生がいつももつチョーク。
先生が字を書く黒板。
先生の触ったものだと思うと、途端にドキドキして。
あの大きくて綺麗な手を見つめるだけで幸せな気持ちになれるんだもん。
何度、チョークになりたいって思ったことか。
はたから見たら、きっと気持ち悪い私だけど。
誰もいないから、浸っていいよね。
私はそう心に言い聞かせて、白のチョークを持つ。