こじらせカップルに愛の手を
は!?
何よ、それ。
聞いてないし。
あいつ、いったい何考えてるのよ!
頭に血が上った私は佐伯のディスクに向かい、彼のネクタイを引っ張って廊下へと連れ出した。
「イテテテ! おまえ何すんだよ!」
「いいから、ちょっと来て!」
私は彼のネクタイを掴んだまま会議室へと向かった。
「何なんだよ。おまえはいきなり」
会議室に着くと、佐伯はネクタイを直しながらブツブツと呟いた。
「どういうことよ?」
「何が?」
「惚けないでよ! 何で今日の接待、橋口さんに頼んだりしたのよ? 私が行くことになってたでしょ!」
「あー、そのことか。悪いけど、もう決まったことだから。おまえは今日、同行しなくていいよ」
何だか歯切れの悪い言い方で佐伯が答えた。
「理由は?」
「理由? ああ、それは、ほら。橋口にもいい勉強になるだろうし、そろそろそういう場にも連れて行きたいと思ってたからさ」
「でも、今日は大事な接待なんだよ? 私が今日の為に色々準備してきたの知ってるでしょ? 上手くアピールできるように資料もまとめたし、何聞かれてもいいようにシミュレーションだってできてるの。お酒だって、とことん付き合う覚悟でいるから私を行かせてよ!」
私は真剣だ。
だって、この企画を成功させたいから。
チームのサブリーダーとしての責任だってある。
「いや。ごめん。やっぱり今回は橋口を連れて行きたい」
それでも、佐伯の答えは変わらなかった。
「あっそ。随分、橋口さんが可愛いいんだね。もういいよ。佐伯になんか頼まないから!」
私は佐伯を睨みつけて語気を強めると、急いで会議室を飛び出した。