こじらせカップルに愛の手を
翌日、せっかくの土曜日だというのに、私は風邪でダウンしていた。
「大丈夫? ご飯持ってきたよ。具合どう?」
一華が卵でとじたおかゆを部屋に運んできてくれた。
「ありがとね。一華。いつも迷惑ばかりかけてホントにごめんね」
「やだ、気持ち悪い。あんた熱でもあるんじゃないの! って、あるのか」
一華は苦笑いした後、真剣な表情になり私を見つめる。
「とにかくさ。この土日で体調を整えて、また来週から仕事頑張りなさいよ。そんな時代錯誤のバカ上司の言うことなんか気にしちゃダメよ!」
そう。
実は昨日、私は部長から言われたことを泣きながら一華に打ち明けていたのだ。
途中で熱があることに気づいて、中断してしまったけれど。
「一華。なんか私さ、いろいろ思い上がってたみたい。たいして仕事ができる訳でもないのに、佐伯とバカみたいに張り合っちゃってさ。勝手にサブリーダーだと思い込んで出しゃばって。きっと、チームの皆もやりづらかったんだと思う。部長も私に辞めて欲しそうだったし、佐伯にまで同情されて…」
「美海…」
「私。真剣に結婚、考えようかな。おばあちゃんが生きてるうちに赤ちゃんだって見せてあげたいし。って、やっぱり、これって逃げかな?」
情けないけれど、心がポッキリと折れてしまったのだ。
「いいんじゃない!? 結婚! とりあえず結婚しちゃいなよ。仕事のことはそれから考えればいいのよ。その方が選択肢だって広がるんだから」
一華の顔がパッと明るくなる。
「そうだね」
私は頷いて、新たな思いを口にしたのだけど、一華と言葉が重なってしまった。
「じゃあ、早速、あいつに告白でも─」
「じゃあ、早速、結婚相談所にでも─」
「え……? 今、何て言った?」
それはそれは恐ろしい顔で、一華が私を見た。
「だから、結婚相談所にでも行ってくるよ……って言おうとしたんだけど」
「もう、何でそうなるのよ! 違う!違う! 全然、違うでしょ!!」
「何がよ…」
「あーもう! この鈍感女!!」
一華の声が急に大きくなり、思わず肩をすくめる。
「ちょっと、響く、響く……。頭に響くから」
「だって、あんたが悪いんでしょ!」
なぜだか一華は、私に呆れながらプンプンと怒っていた。