幻奏少女
彼女は訝しげに、
「ねぇ、さっきのカチューシャ、黒崎恭哉もどきがやるの?」
と訊いてきた。
……見られてたか。
「やらない。ただ、メイドが持ってきた」
「何故に」
「萌え? とか何とか言ってた」
「ふーん」
何やら納得した様子の彼女。納得されても困るんだけど。
そして、ポケットから取り出したナイフを弄び始める。
反射的に窓際を見ると、置きっぱなしだった朔羅のナイフはいつの間にかなくなっていた。
どうやら知らぬ間にポケットに突っ込んでいたらしい。
何にせよ、危ない。
いくら僕が、死んでも構わないとは言っていても、彼女がどうしてここにいるのかとか、そういうことを知ってから死にたい。