幻奏少女
……あなたの中で、黒崎恭哉はどんな人間なんですか。
訊ねたいけど、思った以上の近距離に、上手く言葉が出てこない。
頬を赤くし明らかに挙動不審な僕を見、朔羅は小さくため息をつき、片手を放した。
ふっと吐息が唇を撫でる。
ふいに、彼女の眸に鋭い光が宿った。
「だからさ」
ゆっくりと甘い囁き声。
「あんたはアタシが殺したいヤツじゃない。……けど」
ひたり。
ひやっとした感触に、背筋を冷たいモノが走った。
「あんまり油断されてると、殺したくなるよね」
いやいやならないから!
「や、やめ」
「まぁ、殺んないけど?」
………。
なんだか無性に、先行きが危ぶまれた。