幻奏少女
「嘘」
「どうして? どうして朔羅は人を疑うの?」
訊きながら、分かっていた。
きっと彼女も裏切られたんだ。
僕と同じように。
「じゃあ」
きらり、と、彼女の目が、獲物を見つけた猫のように煌めいた。
「黒崎恭哉もどきが“いらない”訳を教えてよ。そしたらアタシも、話してあげる」
あれだけ頑なに拒んでいたことを、あっさり話すと言う彼女に、僕は探るような目を向けた。
それに気づいて、肩をすくめる。
「全部話すなんて、誰も言ってないわよ」
だって、全部話すには、秘密の重さが違過ぎるもの。
ま、1つも2つも、罪の重さには大差ないだろうけど。