幻奏少女
理由は忘れたけど、学校の都合で4時限目を終え放課後になり、僕は取り出しかけたケータイを仕舞った。
せっかくのチャンス。専属執事に解放された今のうちに、色々探ろうとしたんだ。
タクシーもバスも乗ったことがなかったし、それほど長距離でないのは分かってたから、家まで歩くことにして。
執事やメイドがうろうろしている玄関先を巧く通り抜け、僕はふと、応接間から声が聞こえるのに気づいたんだ。
そして、好奇心に負けた僕は。
そっとドアに近づいて、聞いてしまった。
きっと、最悪なタイミングで。
「……だ。今更。恭哉をいらないと言ったのはお前だろう? だから仕方なく……」
いらない。仕方ない。
マイナスなイメージの言葉が、僕のなかを巡り巡る。
「……が、遺産……見つかっ……だからと言って……今更だって、何度言わせる!?」
怒鳴り声。