幻奏少女

「……黒崎恭哉に」


殺した男は朔羅を見止め、黒崎恭哉と名乗ったらしい。

……って、ちょっと。

僕はそんなコトしてない。


「数十年後の未来の話よ」


僕の思いを読んだみたいに、朔羅はそう言い悲しげに、

「そのとき黒崎恭哉、名乗った後に、“悔しかったら俺を見つけろよ。そしたら、犯してやる”って言った。まぁまさか、アタシが時間を越えるとは思ってなかったろうけど」

……いや、犯してやるとか言われたのなら、探しちゃダメじゃない?

だけど彼女は首を振り、ヤられる前に殺る主義だから、と微笑んだ。

怖。


復讐したかったのよ、と、彼女は構わず話を続ける。

「だから、黒崎恭哉の幼いのを殺しとこうと思ったのよ。なのに」

そこでいったん言葉を切って。

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