幻奏少女
「な、何?」
「あんた、黒崎恭哉に見えない。だから殺すのは保留。で、服。着て欲しいんでしょ? 買ってきてよ」
上から目線なのに嫌な感じはなく。顔にかかったセミロングの髪を払いのけながら、彼女は言う。
けど、見えないって……。まるで前から僕を知ってるような言い方。
僕は彼女に会ったことなんてないはずなのに。
まぁ、名前を知ってる時点で、おかしいんだけど。
さらに言えば、僕の部屋に真夜中全裸で侵入してきてること自体おかしいけれど。
一歩間違えば……いや、間違えなくても、ただの変態だ。
「って、ちょっと! 何してんの?」
「え? 寝る」
「ていうか、買ってこいって言われても、こんな時間にお店開いてないよ?」
「コンビニで下着くらいなら売ってるんじゃない? ……いってらっしゃい」