幻奏少女
自嘲気味に、自暴自棄に。
彼女は再び近づいてきて、
「あんたみたいなのが、人を殺せるわけない。……でしょ?」
確信を得たように、晴れやかに。
「本物の黒崎恭哉を見つけなくちゃ」
恍惚としているようにさえ見える表情を浮かべて。
「ね、朝食食べよ」
突然まるで何事もなかったと思わせるほど普通に言った。
「……あ、うん」
その変化についていけず、僕はぼんやり返事する。
「これ何? ……まぁいいや、貰うよ」
そう言ってハムエッグを食べる彼女は、いたって普通。
さっきと同一人物なんて、半ば信じられないほど。