幻奏少女

「っていうかさ」

ふと、朔羅が僕を見て、疑問を投げ掛けてきたのは、僕が朝食の乗っていたトレイを片付けた頃。

「あんた……」


けど僕は、それ以上聞くことは出来なかった。

なぜなら。


「差し入れ! ですよっ!」

──ハイテンションな声とともに、ドアが開いて入ってきたひとがいたから。

「な……!?」

当然朔羅も隠れる暇がなく、だけどそのひとは気にとめず、むしろにやりと妖しく笑うと僕に向かって言ったのだった。

「ふぅん、あんな可愛いコ連れ込むなんて、なかなかやるじゃない、恭哉サマ」

……語尾にハートマークが見えたような気がするのは、僕の気のせいだろう、きっと。

「つ、連れ込んでなんか」

「えーっ、アタシと同じパターンかと思ったのに。まぁいいや、けどホント可愛い、もうっ、食べちゃいたいっ」

うん、よく分からない科白に混じって不穏な言葉が聞こえた気がするのも、きっと気のせいだ。

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